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公職選挙法違反の不思議な世界

   

世にも不思議な公職選挙法の世界

告示日となり衆議院選挙の選挙戦がスタートしました。

選挙は公職選挙法に基づいて行われますが、何が公職選挙法違反に当たるかご存じでしょうか。公職選挙法は知れば知るほど不思議な法律です。法律自体は「こんな事まで違反になるんだ…」と思う厳格なものなのですが、意図的な抜け道が沢山あって「え、こんな事まで許可されているの?」と思う事が沢山あります。憲法と同じで解釈でカバーされる世界。

そんな公職選挙法のイロハをご紹介します。

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公職選挙法で違反となる行為と許可されている行為

一般人がメールで投票依頼をするのは禁止

最近ネットでの選挙運動が解禁になりましたが、候補者または政党ではない一般人がメールを使って候補や党への投票を呼びかける行為は公職選挙法違反で禁止されています。

有料ネット広告の禁止

有料ネット広告を通じて選挙運動を行うことは禁止されています。しかし、各党とも政党の政治運動の名目でネット広告を使っていたりします。同様に新聞広告や雑誌広告は禁止されていますが、政党名目で広告を出すことは許可されています。

選挙運動を禁止されている者はTwitterのリツイート禁止

未成年や公務員など選挙運動を禁止されている者が、Twitterで投票を呼びかけるツイートのリツイートを行う行為は禁止されています。

facebookいいねは誰でも行うことができる

選挙運動を禁止されている者がfacebookいいねを押す行為は、選挙運動に当たらないとして許可されています。

ネットで投票行動を呼びかけるのは自由だが印刷して配布は禁止

ネットで投票行動を呼びかけている内容をプリントアウトして配布すると公職選挙法違反になります。

選挙運動用の車にはシートベルト着用の義務が無い

これは驚きの法律ですが、道路交通法施行令第26条の3の2第1項第8号の規定により選挙運動を行っている車にはシートベルト着用の義務がありません。候補者が窓から身を乗り出して手を振っていても違法ではありません。

陣中見舞いの酒は禁止だが当選祝いの酒はOK

有権者からの選挙事務所への陣中見舞いの酒は買収であるとして禁止されていますが、当選祝いの酒は寄付であるとして許可されています。

無差別ポスティングは禁止

選挙期間中は証書が貼ってあるビラしか配布してはいけません。また、ビラの配布は個人演説会や街頭演説の場所でしか配布できません。しかし、これを拡大解釈して拡声器の音は響く範囲はポスティングが認められているという解釈があります。また、政党ビラは選挙運動ではなく政治活動に当たるとされ無制限とされている実態があります。

ポスターを公設掲示板以外に貼るのは禁止されている

ポスターも公設掲示板以外に貼るのは禁止されていますが、政党の党首と候補者の2人で写っているポスターは「政党による政治運動のポスター」とされ無制限に街頭に貼るのが許可されています。

公務員は選挙運動ができない

公務員の選挙運動は禁止されています。ただし、特別職(首長や議員など)は例外です。また地方公務員でも自分の選挙区以外の選挙活動への協力ならば認められる場合があります。特別職の選挙運動もその地位を利用してはならないとされていますが、実態は野放しです。また、自治労などのように実質的には公務員が選挙運動を行っているところもあります。

18歳未満は選挙運動ができない

18歳未満の選挙運動は禁止されています。しかし、文書の発送や事務所でのお茶出しなど有権者に直接呼びかけるわけではない選挙運動は例外的に許可されています。実態は候補の家族などは未成年でもかなり深く選挙運動を手伝っています。

報酬を払うことができる運動員

選挙運動で報酬を払うことが許可されている運動員は、事務員・ウグイス嬢・手話通訳者のみです。それ以外に学生バイトなどを雇うと運動員買収で選挙違反となります。連座適用で候補者が逮捕されるケースもあります。

企業が運動員を派遣することは可能か

有給休暇を与えられた人が選挙運動に従事することは許可されていますが、業務命令で選挙運動に従事させることは禁止されています。実際は明文化されていないだけで業務命令である場合も多いのですが…。

選挙事務所は1つしか設置できない

選挙事務所は選挙区に1つしか設置できません。しかし、実態は市議や後援会事務所などが支部として使われていることも多いです。

選挙事務所にはちょうちん1個とポスター・看板しか設置できない

選挙事務所に設置が許可されているのは、ちょうちん1個(高さ85cm、直径45cm以内)とポスター・立て看板だけです。今まで色々な選挙事務所を手伝いましたが、ちょうちんが設置されている事務所は見たことがありません。政治家から送られてくる「為書き」(祈・必勝と政治家名が書かれた張り紙)は事務所内に貼られています。

選挙事務所で飲み物・食べ物として出せるもの

選挙事務所では湯茶程度のものは提供が許可されています。缶コーヒーやペットボトルのお茶、まんじゅうなどのお菓子は提供ができます。お酒は湯茶の範囲を超えているとして禁止されています。ただし、地域によってはかなりお酒の提供にルーズなところもあります。

選挙運動で使用できる車は1台だけ

選挙運動で使用できる車は1台だけです。しかし、実際には運動員を乗り込ませた後続の車がついてきたり、その後続車からも選挙運動の発声が行われたりする場合があります。

使用できる拡声器は1つだけ

選挙期間中に候補者が使用できる拡声器は、告示日に選挙管理委員会で受け取った「標旗」をつけた1つだけです。ただし、個人演説会と街頭演説を別々に開く場合に2器の拡声器が許可される場合があります。また、電気を使わないメガホンは拡声器に入りません。

街頭演説や拡声器の使用が可能な時間帯がある

街頭演説や拡声器の使用が可能な時刻は8:00〜20:00までです。しかし、例外的に肉声による発声は23:59までとする慣習的なルールがあります。

早朝の挨拶行為について

早朝に駅頭に立って挨拶をする行為は単なる挨拶であるとして、街頭演説が可能な時間帯より前であっても許可されています。その際に候補者名が入ったたすきを着ける行為も、たすき着用には時間制限がないため許可されています。

戸別訪問は原則禁止

選挙期間中の戸別訪問は公職選挙法違反で禁止されています。しかし実際にはかなり野放し状態になっているんですけどね…。

連呼行為の禁止

個人演説会または街頭演説の会場以外で候補者の名前を連呼する行為は公職選挙法違反で禁止されています。しかし実態がどのようになっているかは、普段の選挙カーの様子から皆さんご存じだと思います。野放しです。

候補者からの金銭や物品の授受は重罪

公職選挙法の中でも買収は最も重い罪になります。カネやモノを受け取ってはいけません。

電話による投票依頼は制限が無い

メールでは投票依頼はできず郵便も公選葉書しか送れませんが、電話による投票依頼は制限がありません。何本でも有権者に電話ができます。ただし、報酬を受け取った運動員が電話をすると買収にあたります。投票日には電話による呼びかけも出来ませんが、例外的に選挙への投票を呼びかける有志の会の電話であれば許可されています。

追記:連呼行為について

連呼行為について逆に記載してしまっていました。正しくは選挙カーで移動中は連呼のみが許可されていて、街頭演説や個人演説会では連呼が禁止されています。

改正公職選挙法の手引 平成29年版

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  • 発売日: 2017/05/27
  • メディア: 単行本