香港・深圳旅行の後編です。11月19日〜21日に深圳から高速鉄道経由で香港へ戻り、九龍を中心に各地を探索しました。そのレポ記事を書きます。
こちらは地下鉄・太子駅近くで6月以来の抗議活動で亡くなられた方々を追悼するために添えられた線香と献花です。壁には「悼念由6月以来死去手足」と書かれています。
日本の大学生が逮捕された
11月19日に日本人の大学生が香港で香港理工大学を見に行こうとして治安部隊に逮捕されました。日本の知人や友人から私が逮捕されたのではないかという心配のメッセージを頂きました。いくら何でも私は大学生と見間違えられるほど若くはありません。
日本では大学生の逮捕について自己責任論や嘲笑する声が多数湧き起こっていました。私はこの大学生の気持ちが痛いほどよく分かります。私の見解は周庭さんのツイートと同意見です。
私は正直、なぜ日本人の皆さんが香港警察の暴行よりも、被害者である日本人大学生を批判しているのか理解できません。何もしていなかった彼は、本来逮捕される理由はありません。実際、デモのない場所でも、香港警察は暴力や権力を乱用をしますので、現場に行かなくても逮捕されるリスクがあります。→
— Agnes Chow 周庭 (@chowtingagnes) 2019年11月20日
当時、大学生は香港ディズニーランドに観光で来て、帰りに香港理工大学にデモを見に行こうとして逮捕されたという供述がメディアで流されて、「バカだ」「香港の人は真剣に戦っているのに観光気分で見に行って現地の人達を愚弄している」などと彼を笑う人々が多数いました。しかし、釈放後にこの大学生は観光目的という供述を香港警察から強要されたと話しています。
当時の私はこの辺の真相を知るよしもありませんでしたが、明日は我が身、もし逮捕されたら日本国内で自己責任論が湧き起こって私の親しい人にまで批難が向かってしまうと思って慎重に行動するよう肝に銘じました。
ネイザンロード付近
九龍は11月18日に起きたデモ隊と治安部隊の衝突で、私が宿泊していた佐敦や九龍最大の繁華街である尖沙咀のネイザンロード周辺も広範に破壊されていました。最初に香港に来た時には破壊されていなかった場所です。
バス停も燃やされていました。最初に来た時にはごく普通にバスが停まっていた停留場です。
雨傘そしてバリケードを築いた跡が道路のあちこちに残されています。
中国系企業や中国と関係が深いとされた企業への落書きは、ますます激しくなっていました。
中国系金融機関のATMの窓ガラスが破壊され、一部炎上した痕跡があります。
信号付近の配電盤のようなものがよく破壊されて燃やされていました。信号を停止させるためと監視カメラの制御電源も兼ねているからでしょうか。
別な場所でもこの配電盤のようなボックスが破壊されていました。
スターバックスの窓ガラスも割られています。香港のスターバックスは美心食品という企業がフランチャイズ展開していますが、美心食品の創業者の娘・伍淑清氏が香港の女性団体の代表としてジュネーブの国連人権委員会に出席し、香港のデモを少数の抗議者による暴力行為であると批難して民主派活動家への強硬姿勢を支持すると演説しました。このためスターバックスは親中寄りとされ攻撃対象になっています。
マクドナルドも一部炎上しました。このマクドナルドは私が香港に来た時は普通に営業していたマクドナルドです。燃やされて閉店状態になっていました。
LEONAというブランドのお店も燃えていました。
投石用のレンガで道路が剥がされた下は砂であるため、街全体が砂埃と催涙弾の残照でみんなゲホゲホと苦しみながら進みます。道路を流す放水車が大活躍していました。
信号や道路標識が破壊されているか動かないため、車と歩行者が入り乱れて歩きます。3車線道路だとかなり歩くのが厳しいです。
ここはiSQUARE國際廣場購物中心というショッピングセンターなのですが、1階は破壊されて立入禁止になっていました。最初に香港に来た時には普通に営業していた場所です。
中国系ホテルなのでしょうか。入口が破壊され、応急で工事が行われていました。
香港歴史博物館前の治安部隊
香港に滞在できる時間もあと僅かだし、香港歴史博物館も見てみようと思って尖沙咀から東側に行ってみたのですが、治安部隊が歴史博物館の前の道路を封鎖していました。
封鎖した道路の前には赤いヘルメットを被った警察官が1人。赤外線ゴーグルのようなものでしょうか。
道路の奥には治安部隊が多数いました。何かを警備しているようで治安部隊の車両が頻繁に出入りしていました。その様子をやや近い場所で欧米人2人がカメラで撮影していました。ああ、この距離からなら撮影して大丈夫なんだなと思ってスマホのカメラを向けた瞬間…
私が今回の旅行で最も大学生に近づいた瞬間かもしれません。治安部隊がライトを私に向けて照らしました。あわててスマホを下げました。よく見ると撮影していた外国人はPRESSという腕章をつけていました。一般人は撮影不可。慌ててその場所から離れました。監視カメラがあったかは不明ですが入国時に顔を撮影したので、顔認識では私が特定できる状態であったのかもしれません。
治安部隊がなぜ香港歴史博物館前の道路を封鎖しているのかが謎で、香港歴史博物館ってそんなに重要な施設なのかと疑問を持ち、Googleマップを広域地図にしたところ右上の建物を見て全てを理解できました。
またこの近くには夕方頃になると抗議運動の象徴である黒い服を着た人達が多数集まってきました。みんな上着に別な色の服を着てカモフラージュしていますが、内側に黒い服を着ているのが少し見えます。欧米人もいました。トラブルを避けるために撮影はしていません。
佐敦駅も私が香港に到着した時は普通の地下鉄駅だったのですが、深圳から香港に戻ったら出入り口がかなり封鎖されていました。近くで日本語の会話が聞こえて、開いている出入り口を探して道に迷っている日本人の老夫婦がいたので、Googleマップで「ここです」と伝えたら「ありがとうございます」と感謝されました。
黄大仙駅のビラ
地下鉄の黄大仙駅を出た直後のトンネルの様子。中国政府や香港特別行政区政府を批難するビラが多数貼られています。
香港特別行政区の林鄭月娥長官らを踏みつけて歩くように地面に貼られています。
香港観光
香港のパワースポット・道教寺院の嗇色園黄大仙廟。おじさん達が仲良く何かを話していました。
奥の方は工事中のようでシートが張られていて入れなかったため、立ち入りはできませんでした。少しのことにも先達はあらまほしきことなり。そういえば香港をあまり観光してなかったなと思い、最終日の夜はミラーレスカメラを片手に観光モードであちこち回りました。
スターフェリーという船にも乗りました。九龍と香港島を船で渡ることができます。船の下の階は30円、上の階は42円と破格の安さです。
香港の夜景はサイバーパンクな感じがしてとてもワクワクします。そして街全体がエネルギッシュです。
ホテルへの帰る途中、地下鉄に乗ったのですが電車が2駅ほど飛ばして進みました。「地下鉄に快速なんてあったっけ?」と思ったのですが、車両設備が破壊され香港の地下鉄全線が影響を受けているようです。危うくホテルまで帰れないところでした。
太子(プリンス・エドワード)駅の前に6月の逃亡犯条例反対デモ以来の亡くなられた方への慰霊のお線香とお花が置かれていました。
私も線香の前で手を合わせました。
日本へ帰国
旺角警察署の前はデモ隊の突入防止か、白くて大きなプラスチックのような構造物で出入口を制限していました。ここを通らないと夜食を食べに行けないので通過。シールドを持った警察も出入りしていました。
香港国際空港の出入口にもこの突入防止と思われるプラスチックの構造物がありました。そして香港に来た時と同じく、空港の出入口付近に警察の人達が張り込んでいて独自にパスポートチェックが行われていました。私が日本国のパスポートを見せると「空港に行って何をするのか?」と日本語で質問されました。日本語で話すならせめて敬語を学んでからにしてほしいものです。すごく印象が悪かったです。
11月21日に香港国際空港から香港エクスプレスの飛行機に乗って帰国しました。さようなら、香港。また来る日も自由な街であることを願っています。
現在の香港はデモ隊と治安部隊の衝突で市内のインフラが広範に破壊されてきています。また観光産業が冷え込んでしまっていて観光名所でもかなり閑散としていました。香港の飲食店のおばちゃんやおじちゃんは日本ほど丁寧でないけど明るく親しみを込めて接してくれました。この人達が悲しむ光景は見たくないです。
皆さんも香港に観光へ行きましょう。交通インフラが一部機能を失っているのと逮捕されたりトラブルにならないように注意は必要ですが、香港の観光名所や飲食店は普段通り営業しています。そして香港の現在の様子を目に焼き付けて、香港でいま何が起きているのか発信したり考えていくことは大事だと思います。これからのために。