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陣笠議員には権力オタクが多い

   

陣笠議員としての豊田真由子氏

豊田真由子さんと私の関わり | Facebookを読んで陣笠議員に思いを巡らせた。

豊田真由子氏について安倍チルドレンと呼ぶと聞こえは良いが、要は陣笠議員の1人であった。陣笠議員とは大物政治家の下について挙手要員となっている当選回数の浅い政治家のことを指す政治用語だ。戦国時代の合戦では足軽や雑兵が兜の代わりに陣笠をかぶっていたことから下級武士が「陣笠」または「陣笠連」と呼ばれていたことに由来する。

もちろん若手の中でも有能な議員は次世代のホープとして注目される。大物政治家も一目置く場合もある。しかし豊田氏に関してはそんな面は無かった。豊田氏に期待されていたのは政府や与党が出す法案に賛成を投じることだった。しかし豊田氏の自意識は政治家になったことで今までよりも更に肥大化して、秘書や宮内庁職員などに暴行や暴言を吐くようになっていた。

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(『疾風の勇人』)

陣笠議員には権力オタクが多い

旧民主党から民進党にかけて何度か選挙事務所の手伝いをしてきた。自民党の選挙事務所の手伝いもしている。選挙事務所には大物や新人も含め沢山の議員が応援に駆け付けたりする。そこで議員や候補を観察してきて肌身に染みて感じたのは、政治家には2つのタイプの人物がいることだった。

本当に有能だから能力が評価されて政治家になった実力タイプと、民間では生きていけず政治の世界でしか生きられない権力オタクタイプである。権力オタクは政治問題や政局に非常に詳しい知識を持っているが、逆に言うと政局になっている分野以外はほとんど知らず無関心である。権力オタクタイプは民進党の議員にも自民党の議員にもいた。そして当選回数の浅い陣笠議員にはこの権力オタクが多く含まれていた。松下政経塾出身にもこのタイプが多い。

権力オタク議員の特性

権力オタクの議員は自分の能力の低さや身近な問題を棚上げにしながら天下国家や国難を論じるのが好きだ。彼らの目は地盤となる有権者には本心では向いておらず、大物議員に気に入られるかに腐心する。大物議員のおこぼれに与って権力を行使するのが最大の関心事で、政局や財政や安全保障などのマクロな政治問題を勇ましく語ることが好きだが、政局以外の社会問題や有権者の身近な生活にはあまり関心がない。エリート意識を持っていて大衆を導くのは自分達という考えをかなり強く抱いている。

そして目下の人間には自己主張が強く何事にも指示を飛ばしたがることが多かった。自分の指示が間違っている可能性を考慮に入れず上から目線で指示を飛ばす。問題点を指摘すると思考停止して激昂する。民間企業では出世が難しいタイプだが、政治の世界では政局次第でこのような政治オタクが生きていける世界があるのだ。彼らを裸の王様と指摘できる人は有権者しかいないが、有権者の多くは自分の選挙区の陣笠議員のパーソナリティには無頓着である。

実力タイプの議員はもっと論理的に物事を判断できるし、指示も狡猾に進めることができる。陣笠の権力オタク議員はどこかで馬脚を現すことが多く数回の選挙を経て敗れていったり交代させられたりする。このため当選回数が多くなるにつれてこの権力オタクの議員の割合は少なくなっていく。実力タイプの議員にも権力志向はあるが能力値が高いためバランスが取れた政治運営が出来る。

自民党の総務会や派閥による政治教育や調整が失われた世界

かつて自民党の総務会や派閥はこのような権力オタクの陣笠議員の愚見や愚行をよしなに調整・隠蔽し、実力派へと教育していく政治教育の場としても機能していた。しかし自民党の派閥は解体してこのような政治教育を行う主体も失われてしまった。民進党も陣笠議員の教育主体はほとんど存在しない。

各政党ごとや超党派の勉強会は存在するが、ポスト派閥の数合わせや知識ではなく政治的視野の向上を目指す教育機会はもはや失われたと言っても過言ではないだろう。そのため陣笠議員の粗野な暴論や暗愚な行動が可視化されるようになった。劇場型政治の1つの要因になっている。この改善は実力派タイプの政治家でも難しいだろう。

政治とはビッグデータである

政治は本来ビッグデータを扱う分野である。しかし今まではビッグデータの計測が難しかったため、法案や税制の影響などはロジックが通っていれば議論として成り立っていた。それは統計アプローチの実証に支えられていないため、飲み屋レベルの論理でも今まで議会では通用してきた面があった。そして議会での議論は属人性が極めて高かった。

今や議会は陣笠議員の教育能力を失って暗愚な迷言や暴言などが日常茶飯事で表出している。狡猾で熟慮に富んだ名望政治家はもはや誕生しないし、そのような人物となっていくように議員の政治教育も行われないと考えた方が妥当だろう。これをカバーしていくには属人性を低下させていくしかない。

統計学アプローチや機械学習などビッグデータを扱う分野の技術が議会にも応用されていく必要があると思う。AIに幾つかの議席を実験的に割り当てることも技術的に試行してみる必要があるのではないだろうか。