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由緒あるお寺や隣人愛を説くキリスト教も日本の戦争遂行に協力していたよ

   

政治に無関係な企業や宗教団体は存在するのかな?

Togetterの「【悲報】神社へのお賽銭は自民党への献金になると思ってる人々」を見ていて思ったことを書いてみる。

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神社だからといって必ずしも神道政治連盟と密接な関係にあるとは限らないです。その神社や宮司の考え方によってもそれぞれ多種多様。旧民主党は三重県の猿田彦大神を主神とする椿大神社から公認候補を擁立しています。

そもそも政治と無関係な企業や宗教団体は存在するのかな?経団連や経済同友会は自民党との関係が深いので、これらに参加している多数の企業の商品やサービスを利用すると自民党が元気になるけど、それを回避して日常生活を送ることは不可能なのではと思います。

日本医師会・日本商工会議所・JAも自民党との関係が深いですが、開業医を利用しなかったり日本の米を買わないわけにはいかない。団体によって政治色が強い薄いはあるけど、多くの企業や宗教は政治との関係が深いので、日常生活でこれらと無縁な生活を送ることは無理と思っていいと思います。「政治は身近な問題」と表裏一体の構造で、日常生活と特定党派の支持団体との関係は切っても切り離せないです。

浄土真宗・曹洞宗などは民進党との関係が深い

仏教でも浄土真宗(本願寺派)や曹洞宗は民進党との関係が深いです。民進党の公認候補を擁立しています。立正佼成会・霊友会・崇教真光なども民進党との関係が深い。表向きはどの宗派や宗教団体も「投票は信徒の自由な判断に任せる」としているところが多いですが、実際の関係は…。

サービス残業やブラック企業根絶や賃上げのために戦っている労働組合も、政策協定を締結した民主党の候補者に組合員の名簿を提出し、この名簿は(公職選挙法で本来は禁止されている)候補者による戸別訪問に使われます。新聞などで「支持固め」と曖昧に書かれているのは、常態化している支持団体の構成員宅への戸別訪問も入っています。名簿に対して電話や郵便なども行います。

また選挙が近くなってくると労働組合は「ボランティア」の名目で組合員を動員して、選挙事務所の中で事実上の無償労働に従事させます。最近は労組の組織力低下が激しいので、けっこう嫌々ながら手伝いに来る人も多いです。その点、「宗教の人」はモチベーションが高いのでかなり過酷な作業もこなしてくれることが多いです。本来は政治運動をやってはいけないはずの公務員がお手伝いに来ることももちろんあります。

日本の戦争にはお寺や教会も参加していた

第二次世界大戦との関係で神社がとりあげられることが多いです。

確かに国家神道の時代だったわけですが、当時の日本国内の仏教界やキリスト教界も日本の戦争を支持して協力していました。「ゆく年くる年」に出てくるような歴史や由緒があるお寺でも対米戦勝利の祈祷が連日行われて、地域のお寺でも檀家さんに戦争目的を説く草の根のネットワークができあがっていました。寺院の梵鐘も金属として供出され、武器の生産に使われました。

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(戦時中の寺院からの金属供出)

隣人愛を説くキリスト教も、第二次世界大戦への参戦直前に日本国内のプロテスタント系の33教派が統合して日本基督教団が設立されます。代表者は伊勢神宮に教団の設立を報告し、「日本基督教団より大東亜共栄圏に在る基督教徒に送る書翰」など大東亜共栄圏のプロパガンダ作成に協力しています。

日本基督教団より大東亜共栄圏に在る基督教徒に送る書翰

 われらは聖書に基づく洞察と認識とによって彼らの現状を憐れむと共に、この不正不義を許すべからざるものとして憎まずにはいられない。

 日本はこの敵性国家群の不正義に対してあらゆる平和的手段に出でたるにもかかわらず、彼らの傲慢は遂にこれを容れず、日本は自存自衛の必要上敢然と干戈を取って立った。しかも緒戦以来皇軍によって挙げられた諸戦果とその跡に打ち樹てられた諸事実とは、わが日本の聖戦の意義をいよいよ明確に表示しつつあるではないか。彼らの不正不義から東亜諸民族が解放されることは神の聖なる意志である。「神は高ぶる者を拒ぎ、謙る者に恩恵を与え給う」(ヤコブ書四・八)。それでは米英の高ぶりは何によって排撃されるであろうか。皇軍の将兵によってであり、地上の正義のために立ち上がった東亜諸民族の手によってである。そして諸君の民族がこの大聖戦にわれら日本と共に同甘共苦、所期の目的を達成するまで戦い抜こうと深く決意し、欣然参加協力せられたことによって、大東亜の天地には、われら日本人と共に諸君の、すなわち大東亜諸民族の一大解放の戦い、サタンの狂暴に対する一大殲滅戦の進軍を告ぐる角笛は高らかに吹き鳴らされたのである。聖にして義なる神よ、願わくは起き給え、しかしてわれらの出てゆく途に常に共に在して、行く手を照らし助け導き給え。兄弟たちよ、諸君とわれらとを結ぶ第一の絆は、われらが相共にこの聖戦に出て征く戦友同志であるという深い意識である。

 先代先覚者によって薫陶された第二、第三の後継者たちも大君に捧ぐる清明心と隣人を敬愛する情誼と千万人といえども我往かんという勇気とをもって地上的一切の栄達を擲ち、キリスト教に把えられつつ後のものを忘れ前方の目標を追い求めていった。そして個人主義・自然主義・社会主義・無政府主義・共産主義などの諸思想が猛り狂い、怒濤のごとく押し寄せて来る大正時代より昭和の初期にかけて、よくこれに戦いを挑み、キリストの真理を護り、肇国の大義に生き抜いたのである。これら日本キリスト教の指導者たちを偲ぶにつけても、わが国体の本義と日本精神の美しくて厳しいものが遺憾なく発揚せられた事実を想起し感慨無量である。

 しかして遂に名実とも日本のキリスト教会を樹立するの日は来た、わが皇紀二千六百年の祝典の盛儀を前にしてわれら日本のキリスト教諸教会諸教派は東都の一角に集い、神と国との前にこれらの諸教派の在来の伝統、慣習、機構、教理一切の差別を払拭し、全く外国宣教師たちの精神的・物質的援助と羈絆から脱却、独立し、諸教派を打って一丸とする一国一教会となりて、世界教会史上先例と類例を見ざる驚異すべき事実が出来したのである。これはただ神の恵みの佑助にのみよるわれらの久しき祈りの聴許であると共に、わが国体の尊厳無比なる基礎に立ち、天業翼賛の皇道倫理を身に体したる日本人キリスト者にして初めてよくなしえたところである。

 かかる経過を経て成立したものが、ここに諸君に呼びかけ語っている「日本基督教団」である。その後教団統理者は、畏くも宮中に参内、賜謁の恩典に浴するという破格の光栄に与り、教団の一同は大御心の有難さに感泣し、一意宗教報国の熱意に燃え、大御心の万分の一にも応え奉ろうと深く決意したのである。

 本年四月には在来の諸学校が教団立神学校として統一され、教団の制度組織も形式内容も日日に整備せられ、全一体たる教会の実をますます具現しつつある。これを国史に徴するも一大盛事と謂うべく、これを古より闘争に終始した西欧の教会史に徴するも、まことに主の日の予兆の大なる標識というべきであろう。「遂に一つの群れ一人の牧者となるべし」(ヨハネ伝一〇・十六)。

兄弟たちよ。われらはこの慰めとこの希望とを一つにするがゆえに、同じ愛、同じ思念の中に一つとならなければならぬ。隣人愛の高き誡命の中にあの福音を聞き信じつつ大東亜共栄圏の建設という地上における次の目標に全人を挙げ全力を尽さなければならぬ。われらはこの信仰とこの愛とを一つにする者共であるから、同じ念い、共同の戦友意識、鞏固なる精神的靭帯に一つに結び合わされて、不義を挫き、正義と愛の共栄圏を樹立するためにこの戦争を最後まで戦いぬかなければならぬ。われらはこのことを諸君に語る前に自分自らに語っている。われらの盟友にして戦友よ!「汝らキリスト・イエスのよき兵卒としてわれらと共に苦難を忍べ」(テモテ後書二・三)。

 われらは祈る。キリストの恩恵、父なる神の愛、聖霊の交際、われらがその現実の一日も早からんことを望みてやまざる大東亜共栄圏のすべての兄弟姉妹の上にあらんことを。アァメン。

日本基督教団より大東亜共栄圏に在る基督教徒に送る書翰 - Wikisource

もちろん戦争に反対する宗教団体は特高によって解散させられるという恐怖はありました。実際に戦時中に弾圧されていた宗教団体もあります。しかし、それだけでは説明がつかないほど、日本の宗教界は教派や宗派を越えて日本の戦争に協力して、現在はその頃の負の歴史を忘れて世界平和を説いています。

「不幸な歴史だった」はそれらの共犯関係を全てをうやむやに出来る便利なマジックワードではあると思っています。

「政教分離」は美しい理想だけど無理ゲー

「政教分離」は美しい理想だけど、公明党や神道政治連盟や日本会議の問題だけではありません。様々な宗教団体が政治団体と密接に結びついています。

ヨーロッパでもキリスト教系の政党は多数ありますし、アメリカでも福音派も含めて宗教団体は政治に大きな影響力を持っています。政教分離は理想だけど、全ての宗教や企業や団体は政治と無縁ではありません。イスラム教諸国は政教分離ができていないイメージが根深いけど、キリスト教諸国のメディアの影響力が強いのと、欧米諸国の政治家は表向きは政教分離ができているのを演出するのが巧妙なだけで、大きな違いはありません。

世界平和や心の救済を説いている宗教も排外主義な政治家の事務所に信徒を手伝わせることもありますし、サービス残業と戦っている労働組合も組合員を「ボランティア」として動員して選挙事務所で無償労働させます。

この現実にも自覚的な必要があるのかなと思いました。

戦争中の暮しの記録―保存版

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  • 発売日: 1969/08/15
  • メディア: 単行本