国内マストドンは3強インスタンスの寡占状態
マストドンを分散型SNSと紹介している記事が多い。確かにマストドンのアーキテクチャは複数インスタンスの分散型を考慮されているが、コミュニティの実態は少数インスタンスへ多くの人々が集中する寡占状態となっている。
現時点での国内インスタンスのユーザー数では、mstdn.jpが86,860人、pawoo.netが83,307人、friends.nicoが32,465人の3強となっていて、それ以降は3千人未満のインスタンスである。弱小インスタンスの多くが数百人か数十人規模であり、話題になった当初の熱狂は冷めて徐々に過疎化現象が起きつつある。
富めるインスタンスはますます富む
確かにマストドンはリモートフォローなどインスタンスの分散をカバーする仕組みがあるが、弱小インスタンスだとローカルタイムラインが停滞する。フォローしたいユーザーの発見も枯渇する。そして何より自分のトゥートが多くの人の目に触れる機会が少ない。このため弱小インスタンスから3強インスタンスに活動の場を移しているユーザーも多い。
もちろんユーザー数だけが分散傾向の指標ではないが、人の集まるコミュニティには豊富なコンテンツと人との繫がりがあるので、ユーザー数を誇るコミュニティは全ての面で強い。そしてユーザー数が多ければ有名企業や資金提供者の支援も得られるのだ。
無名のインスタンスにはこのチャンスは無く、ユーザーが徐々に去って行くのを見守りながら、「マイペースで運営を」と場末のBARのように自分に言い聞かせるだけである。Mastodonのメンテナンスなど保守運用の雑務が煩わしくなって、早晩多くのインスタンスが閉鎖していくだろう。
分野特化型のインスタンスは、例えばOpenPNEの一部の分野特化型SNSが強かったように残るかもしれない。でも残る分野は限られている。OpenPNE全盛期にも多くの分野特化型や地域特化型のSNSが開設されたが、その多くがテーマ選定と特化型ユーザーやコンテンツ確保の困難に直面して撤退していった。マストドンにもこの分野淘汰が顕在化してくるだろう。生き残るのは一部のニッチな分野特化インスタンスだけかもしれない。
ユーザーは分散を求めているのだろうか?
マストドンの分散アーキテクチャはTwitterの民主化を求めるものだが、ユーザーのニーズとして分散志向があるのかは疑問が残る。ユーザーは自分のトゥートが多くの人に見られてフォローされることを望んでいるし、リモートフォローはインスタンスが分かれているから次善の手段として喜んでいるにすぎない。
分散型SNSであることを喜んでいるトゥートはほとんど見当たらず、インスタンスは寡占傾向がますます強くなっている。そしてその寡占インスタンスは特定企業の資金援助を受けている。
これはTwitterの民主化ではなく形を変えた新しい支配の構造ではないだろうか。