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24時間テレビの寄付金と番組制作費に関するデマ

   

24時間テレビの番組制作費は40億円というデマ

24時間テレビは嫌いなのでほとんど見ないのですが、24時間テレビに関するデマは正していく必要があると思っています。

24時間テレビに関してよく聞くのが、「寄付金が毎年2億円に対して番組制作費は40億円」という言説です。なるほど、それが正しいのであれば、ただちに24時間テレビをやめて、その番組制作費を全て寄付に回した方が困っている人を助けることになりそうです。この40億円問題を糾弾している記事は以下のようにネット上で多数見掛けます。特に2ちゃんねるのまとめサイトでは40億円の数字がよく出てきています。

matome.naver.jp

d.hatena.ne.jp

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

24時間テレビの募金額2億3726万2909円 一方番組の制作費は数十億円に疑問?(1ページ目) - デイリーニュースオンライン

しかし、この番組制作費40億円を裏付けるソースは出てきていません。そもそも日本テレビは個別の番組の制作費を公開しておらず、それは24時間テレビも例外ではありません。誰か内部関係者が証言している可能性も探ってみたのですが、どこにも情報源が見当たりませんでした。情報源を検証することなく40億円という制作費の数字が事実であるように一人歩きしています。

寄付金総額は2億円というデマ

24時間テレビの寄付金総額が毎年2億円規模という言説も正しくありません。確かに番組放送内の24時間で集まる寄付金は毎年2億円前後です。しかし、24時間テレビの募金は番組終了後も年間を通じて行われており、番組のブランド効果は番組放映後も継続しています。

それでは年間の募金額は幾らになるのか。24時間テレビチャリティー委員会の以下のページで公開されています。

www.24hourtv.or.jp

放送回・年 寄付金総額
[第34回] 2011年(平成23年) 1,986,414,252円
[第35回] 2012年(平成24年) 1,168,471,704円
[第36回] 2013年(平成25年) 1,545,226,444円
[第37回] 2014年(平成26年) 936,955,640円
[第38回] 2015年(平成27年) 856,728,209円
[第39回] 2016年(平成28年) 887,482,001円

近年は減少傾向にありますが、2011年に19億8641万円が集まっており、2016年も8億8748万円集まっています。去年でも2億円の4倍以上の募金額となります。24時間テレビの放送効果は番組終了後も続き、チャリティーブランドとして認知されて継続して募金額が集まっていると言えます。

24時間テレビの予算規模は4億2000万円という報道について

比較的信頼度の高い情報として2013年に週刊誌FLASHが24時間テレビのギャラを報道して、24時間テレビの予算規模を4億2000万円と報じたものがあります。この数値を東洋経済オンラインなどのメディアも踏襲して、高額であると批判しています。

toyokeizai.net

この4億2000万円が事実であったとして、その予算規模はどれくらい高いと言えるのでしょうか。日本テレビの年間の番組制作費はIR情報として公開されており、2014年は年間960億2200万円となっています。

d.hatena.ne.jp

960億円を365日で割ると1日あたりの番組制作費は2億6千万円ほどになります。もちろん番組制作費は番組に直接関係する以外の費用も含まれているので単純な日割りでは基準は決められませんが、24時間を使った番組の予算4億2000万円が法外に高いというものではないことが分かると思います。

海外のチャリティーはノンギャラか

もう一つ、24時間テレビに関してよく聞く言説で「海外のチャリティーはノンギャラが基本」というものがあります。確かに海外のチャリティーはノンギャラの有名人が多数出ますが、それだけで構成されるわけではありません。この点についてはハーバービジネスオンラインの以下の記事が参考になると思います。

hbol.jp

理解されない理由のひとつに、日本では『ファンドレイザー』という職業がほとんど馴染みがないのが要因です。ファンドレイザーというのは、一言で言えば資金調達をする人のことを指し、チャリティの世界では寄付金を集める人のことになります。欧米ではこのファンドレイザーが職業として認知されていて、そこにはプロとして寄付を集める対価としてコミッションをもらうファンドレイザーと、ボランティアとして対価なしに寄付を集める人の2種類がいるのです。職業として認知されているため、プロのファンドレイザーが対価を得ることもなんら問題になりません。日本ではこうした概念に馴染みがないことと、寄付を集める人は献身的で奉仕的なボランティアであるべきといった考えが根強い。こうした土壌が、『24時間テレビの出演者にギャラが』という批判が生まれる要因のひとつでしょう。

海外のチャリティーでもお金をもらって寄付を集める役の人がいます。日本だけが特殊なのではありません。そしてチャリティーでギャラを受け取ることは悪いことではありません。それによって年間8億円の資金が集まり、困っている人達に何らかの救援ができるのであれば、社会的に批難されることではないと思います。もちろん、ノンギャラの方がかっこいいですが。

24時間テレビ憎しなのは分かるけど…

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24時間テレビにはチャリティーとおよそ関係ないバラエティーやパフォーマンスも多く入っています。障害者への偏見を助長しかねない番組構成であることも多いです。私も24時間テレビは好きではなく、寄付は日本赤十字やUNHCRなどを通じたものに限定しています。

しかし、だからといって番組制作費が寄付金を大きく上回っているというデマに加担して広めたり、社会的意義を言われなく批判することは正しくないでしょう。現実には年間を通じた寄付金は番組制作費を上回っており、困っている人を助ける力となっています。仮に24時間テレビをやめたとしても現状と大きく変わらない番組制作費は掛かります。ノーギャラではない人達は海外でもいます。

そのことを踏まえないと正確な議論はできないのではないでしょうか。