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いじめと発達障害に関するデータと「いじめられる側の原因」

   

いじめられる側に原因あるというツイート

Twitterやはてなで「いじめられる側に原因がある」というツイートが話題になっていました。空気が読めなくて馴染もうとせず、コミュニケーションも取らない非協調的態度にいじめの原因があるとする漫画です。この漫画を読んで「それってそのまんま発達障害の傾向だよね…」と思いました。今日はその件について考察します。

個人的な体験

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データを見ていく前に、まず私個人の体験と問題意識からお話しします。私は精神障害と発達障害があるとされて、00年代前半には障害者手帳を持っていました。最近までADHD治療薬による治療も受けていました。最近はだいぶ寛解しましたが、やはり現在も苦しめられる時はあります。

私は小さい頃からみんなと違う行動や解釈をするところがあり、それが新たな気づきを生む良い面もあったのですが、「変わり者」として格好のいじめの標的になっていました。

小学校の時は版画の授業でみんなと違う版画を彫っていたら、クラスのいじめっ子が彫刻刀で私の版画にちょっかいを出してきて「やめて」と言って振り払ったら「えい!」と私のお尻に彫刻刀を刺されました。お尻から血が出て校長先生に私といじめっ子と両方の親が呼び出される騒ぎになりました。

中学校の時も目立つ変わり者でした。そのため柔道部員に羽交い締めにされて気絶するまで首を絞められる「落とす」といういじめを受けていてよく休み時間に気を失っていました。給食の時間も先生の見ていない時に白いご飯にヤクルトと雑巾を入れられて「食べろよ」と強要されて食べたりとか。ナイフで脅されたこともあります。

中学校には養護学級(現在の特別支援学級)があって、その生徒達が教室に入ってくると「ヨウゴは来るんじゃねえ!」とよくクラスの人達が蹴飛ばしていました。私は学級委員長だったので彼らをかばい一緒にいじめられました。修学旅行の自由行動では養護学級の3人全員が「たかちゃんと同じ班がいい」と言ったそうで、私の班に養護学級の3人と養護学級の先生が私と一緒の班になって行動することになりました。

そういう子供時代を送ってきたので、障害といじめの関係は他人事ではなく身近な問題であったように思います。

発達障害といじめの関係に関するデータ

発達障害を持つ子供は単に注意力を失うだけではなく、行為障害や適応障害・精神障害などの二次障害を誘発しやすくなります。この二次障害がいじめた時のリアクションの「おもしろさ」となるため、いじめの標的となっていく傾向があります。新潟大学の長澤正樹氏による「いじめ・不登校の対応」という資料では発達障害と二次障害について以下のスライドで解説しています。

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いじめ・不登校の対応.pdf))

国立特別支援教育総合研究所がまとめた「発達障害と情緒障害の関係と教育的支援に関する研究 ー二次障害の予防的研究を考えるためにー」という研究報告書があります。この研究では発達障害の子供を持つ保護者にアンケート調査を実施しました。発達障害の対象は、ASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)、ADHD(注意欠陥多動性障害)、LD(学習障害)です。アンケートの中でも「情緒面や行動面の気になる状態」を質問したところ以下のような回答結果となりました。

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発達障害と情緒障害の関係と教育的支援に関する研究 ー二次障害の予防的研究を考えるためにー

このような情緒面や行動面の気になる行動は、最初に紹介した漫画の「いじめられる側の原因」と重なる部分が多いです。この特徴が集団の中でいじめられる標的となっていきます。

福岡大学の松永邦裕氏による「思春期における高機能広汎性発達障害といじめー気づかれにくい異質性の理解とその対応の課題ー」という論文の中に、通常学級に在籍する高機能広汎性発達障害(HFPDD)のいじめに関する調査データが紹介されています。HFPDDの障害を持つ子供はとても高い割合でいじめの被害に遭っています。

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思春期における高機能広汎性発達障害といじめー気づかれにくい異質性の理解とその対応の課題ー

中部大学の三島浩路氏による「中学生の「いじめ」被害と発達障害傾向・学校適応」という論文では、2つの県立高校の生徒の保護者2,031人へのアンケート調査を行った結果が掲載されています。まず摂食障害といじめ被害についてですが、摂食障害傾向がある生徒は障害が無い生徒よりも高い割合でいじめの被害に遭っています。

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ASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)の障害傾向がある生徒も障害が無い生徒よりも高い割合でいじめの被害に遭っています。

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中学生の「いじめ」被害と発達障害傾向・学校適応

甲南大学の大西彩子氏らが日本教育心理学会で発表した「広汎性発達障害や注意欠陥・多動性障害の児童・生徒へのいじめに関する研究」という研究成果では、発達障害を持つ子供の保護者に行ったアンケート調査を元に、身体的不適応・心理的不適応・教師不信感・教師信頼感・教師能力信頼感・直接的いじめ・関係性いじめ・友人サポートの相関関係を求めました。その結果、身体的不適応や心理的不適応と関係性いじめには、緩やかですが正の相関関係があることが示されました。

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「いじめられる側に原因がある」について

今まで見てきたデータは傾向に関するものであり、いじめの全てのケースを網羅するものではありません。発達障害が無関係ないじめもあります。また発達障害のいじめについても、ミクロな1つ1つのケースでは本人の行動にも過失があった場合もあるでしょう。発達障害が免罪符にならないケースはあります。

しかし全体の傾向として発達障害を抱えた子供はいじめの標的になりやすいのは間違いないでしょう。社会のいじめ全体に関する議論で「いじめられる側に原因がある」という論を展開することは、障害があるのは自己責任とする長谷川豊氏のような主張と同一の短絡性や問題であると言わざるをえません。

また今回調査してわかったのですが、いじめと発達障害の関係について国や研究機関でもまだ大規模な実態調査が行われていませんでした。社会認識を正していくためにも早急な実態究明が求められているように思います。